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北海道支部について

特別講演会のお知らせ【2017.9.15 藁谷正明 先生】(2017.09.11更新)

演題
脳MRスペクトロスコピーによる後部帯状回におけるN-アセ チル-L-アスパラギン酸/ミオイノシトール比の低下は将来的アルツハイマー病発症のリスクマーカーになりうる
-健常高齢者 289 例の 7 年間の追跡検討-
演者

藁谷正明 先生

所属

松戸市立東松戸病院 神経内科

東北大学加齢医学研究所老年医学講座 非常勤講師

日時

2017年9月15日(金)17:30-19:40

場所
北海道大学薬学部 1 階 臨床薬学講義室
(札幌市北区北12条西6丁目)
主催

北海道大学 大学院薬学研究院

共催

日本生化学会・北海道支部

概要
 アルツハイマー病(AD は、中核症状が出現してからの介入は遅く、臨床症候がないが、病理学的には大脳皮質に異常アミロイドの沈着が進行している、いわゆる発症前期“プレクリニカルAD”期からの介入が重要である。プレクリニカルAD期を診断するため、アミロイドやタウPET等が開発されADの発症前診断、分子病態把握に優れているが、日常臨床診療では実用的でない。プレクリニカルAD期の対象者をスクリーニングで抽出し、抽出された対象者に対し、intensive therapy を行うことが有効と推測されるため、簡便、非侵襲的、安価である血液、MRI等の画像診断を用いたプレクリニカルADスクリーニングの構築が理想である。 本邦では MRI による AD 診断として海馬萎縮を評価する構造的 MRI:VSRAD が有用で、普及しているが、海馬萎縮(形態的異常)を認める段階の多くは既に臨床的に AD/軽度認 知障害(MCI)を呈している。我々は、形態的変化を認める以前の生化学的異常を検出する目的で、通常の 1.5 テスラ MRI による脳 MR スペクトロスコピー(MRS)を用いて AD の病態に重要とされる後部帯状回域の解析を行った。ランダムに選択した健常高齢者 289 例をベースラインから7年間臨床的に追跡した。7年後に、200 例(60%)は認知機能正常維持群であった。一方で、53 例(18%)は MCI、21 例(7%)は AD、8 例(2%)がパーキンソン病(PD)、7 例(2%)が dementia with Lewy bodies (DLB)を発症した。AD、MCI、DLB 発症例ではベースライン時で、N-アセチル-L-アスパラギン酸 (NAA)/ミオイノシトール(MI)比が明らかに認知機能正常維持群より低値であった。 MMSE スコアと NAA 値は明らかな相関を認めた。後部帯状回の NAA/MI の有意な低値 (ROC 解析:cut-off value of < 1.67)である対象者はAD発症危険群であると思われた。今後、MRI(VSRAD、MRS)とこれまでの髄液及び新規開発血液診断マーカー 等を利用し、プレクリニカルADスクリーニングの構築を目指したい。
連絡先

北海道大学大学院薬学研究院 神経科学研究室 鈴木 利治

(TEL :011-706-3250)

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