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北海道支部について

講演会のお知らせ【2015.9.8】(2015.08.13更新)

演題

「蛍光可視化で探るオルガネラホメオスタシス の生理機能と障害」

演者

阪井 康能 先生

所属

京都大学 農学研究科 応用生命科学専攻

日時

2015年9月8日(火)15:30-16:30

場所

北海道大学地球環境科学研究院(講義室D-102)

(札幌市北区北10条西5丁目)

共催

日本生化学会北海道支部

概要

I.  オートファジーによるオルガネラ-リサイクリングの分子機構と生理機能

 蛍光酵母細胞を用いて、オルガネロファジーの分子機構と微生物に

おける生理機能研究を進めている。メタノール酵母Pichia pastorisでは、

いくつかのAtg分子(PpAtg18, Atg8, Atg4)はオートファゴソーム形成のみ

ならず液胞の形態制御にも必要で、PpAtg18のリン酸化により液胞膜上

にあるPI(3,5)P2への親和性を変化させ、オートファゴソーム形成と液胞

形態制御という2つの機能をスイッチしていた。メタノール酵母

Candida boidinii や植物病原菌は葉上で増殖し、後者は分化して植物感染する。

酵母atg変異株は、通常、その表現型が生育能として反映されないが、

葉上環境ではオルガネラ・ダイナミクスが厳密に制御されており、C. boidinii

及び植物病原菌のペキソファジー(ペルオキシソーム分解)変異株は、植物葉

上で増殖できず、後者では感染能も失っていた。一方、液胞内リパーゼである

出芽酵母Atg15の破壊株では、液胞に運ばれたオルガネラが液胞内に蓄積して、

(脂質も含む)オルガネラ-リサイクリングができず、脂質滴は減少した。

脂質滴を分解するリボファジーがAtg分子群に依存しないミクロオートファジー

によることも明らかになりつつある。オルガネロファジーの分子機構から自然環境

におけるオルガネラ-リサイクリングの生理的意義について議論したい。

Ref I) J. Cell Biol., 202, 685 (2013) ; J. Cell Sci., 123, 4107 (2010);

Plant Cell, 21, 1291 (2009); PLoS ONE, 6: e25257 (2011); Sci. Rep, 5, 9719

(2015); Autophagy, in press (2015); Front. Plant Sci, 5, 81 (2014).

 

II.  蛍光レドックスプローブによるレドックス障害の発現と回復機構の解析

 細胞内レドックスは一定に保たれ、これが崩れると様々な疾患の原因となる。

通常、レドックス状態は生化学指標により表現されるが、実験が煩雑な上、

時空間的分解能にも欠ける。酵母レドックスセンサーであるYap1 のredox

sensing regionの構造変化をFRETにより検出して可視化するRedoxfluorは、

グルタチオンだけでなくチオレドキシンや活性酸素種とも直接反応し、

細胞内レドックス状態を実時間で可視化する。プロテアソームを阻害した培養

細胞を用い、レドックス異常を正常化するモジュレーターと、その時空間的作用

機作の解析を行った。その結果、ミトコンドリアから発生するROSがプロテア

ソーム阻害による細胞死の鍵となっていた。細胞内レドックスの可視化解析が

もたらす、生物学・医薬・食品分野での今後の展開についても展望する。

Ref II) Mol. Cell Biol, 30, 3758 (2010); Sci. Rep, 4, 5896 (2014); Antioxid.

Redox Signal, 16, 698 (2011); バイオサイエンスとインダストリー, 73 198

(2015).

 

連絡先

森川 正章   

 北海道大学大学院地球環境科学研究院

  札幌市北区北10条西5丁目

  TEL: 011-706-2253,  FAX:011-706-2253

  e-mail: morikawa@ees.hokudai.ac.jp

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